てんとう虫と言えば、多くの方が成虫の姿を想像されることでしょう。赤黒のナナホシテントウや白黒のウスキホシテントウなどなど、てんとう虫には様々な種類が存在します。
しかし、いずれの種類も幼虫期間を経て成虫となる、所謂完全変態の虫です。成虫になったてんとう虫はアブラムシを食べるとご存知の方も多いと思いますが、幼虫のてんとう虫は一体どんな餌を食べているのでしょうか?
今回はそんな春から夏、秋にかけて見られるてんとう虫の育て方と、幼虫の餌について見ていきたいと思います。
てんとう虫の幼虫 餌は何?
先に結論からお伝えすると、基本的にてんとう虫の幼虫は成虫のてんとう虫と同じものを食べます。ですので、てんとう虫を卵や幼虫から育ててみたいと言う方は、とりあえずアブラムシが確保できる環境であれば育てることは可能です。
あと、餌と言えるのかどうかは分かりませんが、孵ったばかりのてんとう虫は幼虫同士で共食いすることも少なくありません。実際に卵から孵化させて育てるという方は、このような光景を目にする機会があるかもしれませんね。
「アブラムシの確保は難しいけれど、どうしてもてんとう虫を飼育したい!」と言う方は、人工餌でもてんとう虫を育てることが可能です。しかし、全ての種類のてんとう虫の幼虫が人工餌を食べるか不明で、更にナナホシテントウは何故か紹介する人工餌では育ちません。例え口にしたとしても、成虫になる前に死んでしまいます。ですので、可能な限りはアブラムシを餌として与えるのが理想です。
人工餌というのは蜂の子を粉末状にしたもので、基本的に販売されているものではありませんので自分でイチから作る必要があります。一般の方には少しハードルが高いかもしれませんが、一応てんとう虫の人工餌の作り方を紹介しておきます。(興味のない方は読み飛ばしてください)
てんとう虫の幼虫の餌(人工餌)の作り方!
先にお伝えした通り、てんとう虫の幼虫の人工餌には蜂の子の幼虫が必要になります。なかなか手に入れることが難しいと感じてしまう方も多いと思いますが、夏の終わり頃から秋にかけて、ネットでも冷凍の蜂の子が販売される機会はたくさんあります。
これらは虫や昆虫の餌として販売されているわけではなく、人間が食べる食材のひとつとして売られているものです。ですので、抵抗が無い方であればてんとう虫の餌と自分のご飯の両方に使えることが出来るので、便利な食材とも言えなくはないでしょう。その栄養価の高さは、サプリメントなどにも活躍するほど高いものとなっています。
ちなみに、冷凍の蜂の子(フリーズ蜂の子と言われることもあります)には、生の蜂の子をそのまま凍らせたものや、塩茹でしたもの、甘露煮や佃煮にしたものなどがありますが、てんとう虫の餌として使う物には当然生の冷凍蜂の子を選んでください。
冷凍蜂の子を使った、てんとう虫の幼虫の餌の作り方はこちらです。
【人口餌の作り方】
- 蜂の子の冷凍をミキサーにかける。(フリーズドライされた蜂の子がより望ましいです)
- ミキサーにかけた蜂の子を5、酵母を3、粉砂糖(デンプンが入っていないもの)を2の割合で混ぜる。
- 餌を毎日作らずに、飼育ケースに入れっぱなしにしておく場合には、全体の1%の割合で安息香酸(保存料)を混ぜる。
- これだけだと水分を補給できないので蜂の子の餌とは別に、スポンジなどに水分を含ませた物を飼育ケースに置いておく。
以上となりますが、やはり材料に蜂の子を必要とするので少し難しいですよね。蜂の子は値段も結構高く、フリーズドライされた物であれば15gで2,000円以上します。
てんとう虫が見付かったということは、その近くにアブラムシが居る可能性も高いですので、人工餌を検討する前に、まずは近くにアブラムシがいないか充分に探してみましょう。
てんとう虫の飼育ケースの環境は?
てんとう虫を飼育はそれほど難しいものではありません。卵や幼虫、成虫を持ち帰って成長の仕方や、飛び方を観察してみるのも面白いでしょう。餌を除けば、飼育に必要な物は簡単に手に入る物ばかりです。
ここからは、実際にどのような物が必要になるのか見ていきたいと思います。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物1 餌
先にも紹介した通り、餌にはアブラムシが望ましいです。逆にアブラムシが確保できないのであれば、自宅での飼育は見送ったほうがいいでしょう。
てんとう虫はその見た目とは裏腹に大食感で、幼虫は日に20匹、成虫は日に100匹ものアブラムシを食べます。水分はそのアブラムシから得ることになりますので、アブラムシさえ与えていれば問題ありません。
アブラムシが付いている茎や葉、枝などを毎日採っても良いですし、まとめて採って冷蔵庫に保管することも可能です。
【アブラムシの保管方法】
採ってきたアブラムシを茎や葉ごとジップロックなどの袋に入れて冷蔵庫に入れておきます。この時、ジップロックの中にはペーパータオル等の水分を取るものを敷いておきましょう。(水分が発生し、中のアブラムシが溺れてしまう可能性があるためです)これだけで3~4日は生きています。
または、タッパなどに入れて涼しい日陰に置いておいても問題ありません。冷蔵庫に虫を入れるのに抵抗があるという方は、ベランダなどにタッパを置いておくといいでしょう。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物2 飼育ケース
虫かごのような飼育ケースだと隙間から逃げてしまいます。出来ればプラスチックやガラス製の隙間の無いものを選びましょう。
蓋のみが虫かごのようなタイプの飼育ケースの場合には、サランラップで飼育ケースを覆った後に蓋をして、爪楊枝などで小さな穴を数か所開けておくといいでしょう。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物3 土
必須ではありませんが、なるべく自然の形に近くなるように飼育ケースの地面には土を敷いてあげましょう。(越冬のことを考慮してもあった方がいいです)
厚さはそこまで必要ありません。全体の底が覆える程度の土を2~3cmほど入れれば充分です。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物4 落ち葉
飼育ケースの隅に落ち葉を数枚置いておきましょう。てんとう虫の良い隠れ家になり、越冬場所になるはずです。
飼育ケースの地面全体に落ち葉を置いても問題ありませんが、あまり敷き過ぎると何処にてんとう虫が居るのかわからなくなり観察が難しくなるので注意してください。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物5 止まり木
てんとう虫の止まり木も用意してあげましょう。これは木である必要はなく、草などでも問題ありません。アブラムシを餌として与える場合には、アブラムシが付いている草をそのままケースに入れて置くと良いでしょう。
また、産卵時期には産卵場所にも使われるため、止まり木は必ずあったほうがいいです。卵は柔らかい葉に産むことが多いため、可能であれば葉がついているものを選ぶと良いでしょう。
てんとう虫の飼育ケースに必要な物6 削った鉛筆
削った鉛筆は飼育ケース内に入れるものではなく、観察やてんとう虫、アブラムシの移動の際に使う機会が多くなります。指だと怪我をさせずに捕まえるのが難しく、場合によっては死なせてしまうこともあるでしょう。
同じように、ピンセットでつまむにしても硬すぎて怪我をしてしまう可能性が高いです。ですので、削った鉛筆の先を上手に使ってそこへ乗せてあげると良いでしょう。
てんとう虫の冬越しと夏眠
てんとう虫が冬越し(冬眠)するのはご存知の方も多いと思います。しかし、夏眠(かみん)すると言うのは聞いたことが無い方が多いのではないでしょうか?実は、てんとう虫は夏の暑い7月や8月にも冬眠と同じような夏眠をとります。
理由はすごく単純で、餌となるアブラムシが減少するからです。真夏の27度を超えるとアブラムシは減っていくため、餌となるアブラムシが居なくなったてんとう虫も夏眠せざるを得ないという訳ですね。
これは地域によって様々ですので、例えば北海道のように真夏も涼しい地域だと、アブラムシは普通に居ますのでてんとう虫も夏眠しません。
「最近餌となるアブラムシが少なくなってきたなぁ」と感じた際には、飼育しているてんとう虫も夏眠体制に入っているかもしれません。飼育ケース内の落ち葉の下から出てこなくなった場合には、死んでしまった訳ではなく夏眠をとっているだけということが多いですので、そのまま土に埋めてしまわないよう注意してください。
夏眠の最中に餌は必要ありません。飼育ケースをなるべく動かさず、そっとしておいてあげましょう。ちなみに、夏眠の前に充分な栄養を取っていれば冷蔵庫の中で夏眠しても3ヶ月は生きていると言われているほどてんとう虫は強い生き物です。
一方冬越しの際には、集団で暖をとるように集まります。どうして仲間が集まる場所が分かるのか分かりませんが、1度冬越しした場所には来年もてんとう虫が集まって冬越しすることが多いそうです。こちらは暖をとっているてんとう虫の動画です。
自宅の飼育ケースでてんとう虫を冬越しさせる場合には、飼育ケースごとダンボールに入れるといいでしょう。また、ダンボールと飼育ケースの間には、湿らせた新聞紙を入れておくと乾燥を防げます。
ダンボールに入れた飼育ケースは温かい環境に置いてあげる必要はなく、風の当たりにくいベランダなどに置いておくといいでしょう。うまく冬越しできると、外が暖かくなってきた頃に活動を始めます。
ちなみに、よく見かける赤黒のナナホシテントウは冬を越す前に死んでしまいます。黒とオレンジ模様のナミテントウは寿命も長く、飼育にはオススメの種類です。そんなてんとう虫の種類についてはこちらで紹介していますので、併せて参考にしてください。
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